きょうは、三週間ほど前に持ち込まれていたXR250シリンダーヘッドの折れ込んだボルトを抜去する作業にようやく取り掛かることができた。
話がそれるけど、「抜去(ばっきょ)」という言葉は、骨折した部位を手術してプレート等で固定後、1年から1年半後位に再度手術してそのプレートを取り外す時に「プレート抜去」という言い方をしていたのだけれど、「ばっきょ」で変換しても出てこないし、辞書にも載っていない。これって「病院用語」もしくは「ナース用語」なのかな???
―――ちなみに私は「プレート抜去手術」を3度受けています。
ってことは「プレート装着手術」も3度‥‥‥おっと、話がそれすぎてしまった
さて、話を戻して、持ち込まれた時の状態はコレ
依頼主の方がご自分で「エキストラクター」を使って抜こうとしていて、そのエキストラクターが中で折れてしまい、その折れた部分がくい込んだまま残っている状態だという―――これは手ごわいぞ!
こういう「修復作業」は、まずどうやって攻めるか戦略をじっくり考えてから作業にかからないと、傷をどんどん深くしてしまって「お手上げ」状態になりかねないが、プロとしては「腕の見せどころ」でもあるわけで、俄然やる気が出てくる。
ここで「エキストラクター」とはどんな物か簡単に説明しておこう。
▲これがその「エキストラクター」。
折れ込んだボルトに穴をあけ、これを突っ込んで反時計回りに回せば穴にくい込んでボルトを抜く事ができる、という理屈だが、実際にこれを使って抜く事ができるケースは非常に少ないのだ。
特に、錆びついて固着したボルトを無理に緩めようとして折れ込んだケースの場合、これを使って無事にそのボルトを抜き取る事ができる可能性は「0%」と断言してもいいくらいだ。
ただ単に締めすぎで折れ込んだ場合でも、慎重に作業しないとボルトに穴を開けてそこにこれをくい込ませる事によってボルト外径が膨らんでしまい、ネジ穴に密着して緩まなくなってしまう事が起こりやすいのだ。
だから私は、錆びついて折れ込んだボルトの抜去は「センターに穴を開けてドリルでボルトをまるごと削り取る」という方法をとることが多いが、ボルトのセンターに穴を開けるにはちょっとした「職人ワザ」が必要になる。
今回のケースでは厄介なことにボルトの中に折れたエキストラクターがくい込んだままになっていて、エキストラクターは「焼入れ鋼」でできていて非常に硬いため、ドリルは歯が立たない。
幸い、このネジ穴が「めくら穴」ではなく反対側に突き抜けていたので、邪魔になるフィンをエンドミルで削り取って裏側からロングドリルでセンターに穴をあけ、エキストラクターにぶつかった所で細いピンを使ってその破片をたたき出し、ボルトを抜去(というか削除)することに成功↓
その後、「ヘリサート」でネジ穴を再生↓
そしてこれが完成写真↓
―――というわけで無事“手術成功”となったわけですが、ハッキリ言ってこの作業ができる人間は、この世にそれほど多く存在しないでしょう。
そう、工具やボルトの気持ちが解る人間だけが、この作業を見事にやり遂げる事ができるのです(←女の人の気持ちも解らない男が、エラそうに語ってんじゃないよ!?!?)。
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